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世界をリードするAI技術の未来 アメリカとの比較で見る中国の強みとアジアの展望

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大森 葵

2024年12月06日

この記事は約4分で読めます。

アジアがAI技術の中心地となる理由

Ptmindは、中国と日本で同時に創業した企業で、またアメリカにも拠点を持っています。そこで今回は、各国の特徴を捉えつつ、昨今のAIを取り巻く業界シーンや、アジアが最先端AIの拠点となりうる展望を探ります。この記事では、米中テクノロジーの特徴的な違いや、主に中国のAI技術の強みについて解説します。

AI技術において世界を席巻する中国とアメリカ

2013年から2023年の間に、AIスタートアップは世界中で急速に増加しました。中でもアメリカは5,509件という圧倒的な数を誇り、中国の1,446件がそれに続きます。イギリス(727件)や日本(333件)も重要なプレイヤーですが、特に中国の存在感が際立ちます。

AI技術に関してまさに世界をリードする二強である米中ですが、技術における発展モデルには明確な違いがあります。この違いは、優劣ではなくあくまでも特徴であり、並行していわばパラレルワールドの状態で存在しているものです。

具体的に、アメリカと中国の技術発展モデルには次のような違いがあります:

  • アメリカモデルは「ブレイクスルー」や「テクノロジー(技術革新)」に重点を置き、グローバルな市場を目指すビジョン主導型。
  • 中国モデルは「融合と速度」や「応用」にフォーカスし、結果重視でローカル市場に根ざしたアプローチをとっている結果主義型

ゼロイチのアメリカ、応用の中国

突破 vs. 融合+速度

アメリカは、基礎技術の「突破」による革新を重視します。一方、中国は既存技術の「融合」と迅速な応用を通じて進化しています。

技術 vs. 応用

アメリカは新技術の開発を重視し、中国は実践的な応用に注力しています。

ビジョン駆動 vs. 結果駆動

アメリカは長期的なビジョンを基盤にしたイノベーション、中国は短期的な結果を追求するスタイルが特徴です。

グローバル化 vs. ローカライズ

アメリカはやはり英語でサービスが生まれることもあり、おのずとグローバル市場をターゲットとする一方で、中国は国内市場のニーズを優先する傾向にあります。(近年では中国企業もグローバル志向を強めています)

いわば、0→1のアメリカ、作られた1に対して、さまざまな応用を施すことで、社会に急速に融合させていく中国、という特徴があります。

そしてこの構図はテクノロジーの時代で繰り返し現れており、これからのAI時代においても類似した動きが出てくるのではないかと考えられます。

テクノロジー分野でのリードを広げる中国

ここからはさらに中国のテクノロジー分野に重きをおいていきます。

中国はAIと量子技術の両分野で重要なポジションを占めています。特に、応用系技術では中国が世界をリードしていることが明確です。一方、アメリカは量子コンピューティングなどの基礎技術で依然としてリードしていることもわかります。

AI技術の競争力の3つの源泉と中国の強み

AI技術において競争力に直結するのは下記の3つの要素だと言われています。

人材

最も重要なのは、人材です。この点において、中国政府は1980年代から理系教育への大規模な投資を行い、STEM分野(科学、技術、工学、数学分野)で多くの人材を育成してきました。この取り組みはAI時代の競争力に直結しています。

2020年のSTEM卒業生数を見ると、中国は357万人で世界トップに位置し、次いでインド、アメリカが続きます。中国の圧倒的な卒業生数は、AI分野を含む次世代技術における競争力の基盤となっていると言えそうです。

データ

次いで重要なのがデータです。AIのトレーニングやそれゆえの精度向上の鍵を握るのはやはりデータです。世界一の人口を誇る中国は、この点で世界最大級のデータ量を持っているとも言えます。

計算力

アメリカによる半導体輸出制限もありつつ、中国では設備とエネルギーを活用して計算力を補い、特定の応用分野で優れた成果を上げています。

2022年には、アメリカ政府がNVIDIAやAMDの高性能GPUの中国への輸出を制限する措置を講じました。これにより、AI計算能力の向上を狙う中国の動きは一時的な制約を受けています。

その状況下で広大な土地を生かしたエネルギーや蓄電池、太陽光発電といった分野で独自の強みを活かし対応しています。

また、中国国内では、都市ごとに異なるAI強度と成長ポテンシャルが見られます。下図は、AIの主要技術領域に対する国内の主要都市の発展指数を色の濃淡で表現したものです。

都市は大きく以下の3つのカテゴリに分けられます:

  1. 先進的発展都市 北京、上海、深圳はAIの中心地で、政策支援、資金、人材のすべてで強力な基盤を持ちます。特に北京は政策支援と基礎施設の整備で他都市を圧倒しています。
  2. 高速発展都市 杭州、南京、広州などの都市は、特定の技術領域や応用分野で急成長しています。例えば、杭州市は機械学習分野で大きな競争力を示しています。
  3. 新興勢力都市 蘇州、重慶、成都などは、政策支援やクラウド計算といった特定分野で可能性を秘めています。

AIスタートアップが牽引する未来

LLM(大規模言語モデル)の登場により、中国を主とするスタートアップが世界をリードする時代が訪れています。以下は、LLMのエコシステムを形成する「Zone 1」から「Zone 6」のそれぞれについて、技術スタックが、基盤技術からエンドユーザーに届くまでの複数の層で構成されている図です。

医療、教育、法務、金融など、特定の用途や産業分野向けに最適化されたモデルを提供するZone3や、モデル開発・運用を支援するためのプラットフォームやクラウドサービスを提供すZone4に中国系のサービスが多く見られ、ここでも先述の「応用の中国」を表しています。

課題先進国 日本のあり方

AI技術が世界中で急速に進化する中、日本は課題先進国として、その応用技術を積極的に取り入れることで、競争力を高める重要な転換期を迎えています。

特に中国の先進的なAI技術と日本の高い技術基盤を組み合わせることで、相互成長の可能性が広がっています。

圧倒的な競争力を持つ中国を筆頭に、アジアが最先端AIの拠点となる未来は、もはや絵空事ではありません。

Ptmindとしても、ミッションに掲げる人と機械の共創、そしてアイデンティティである日本と中国の強みの掛け算を体現すべく、引き続き自社でもAI技術の発展と実装に取り組んでいきます。

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