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なぜリピーターは減っているのか?コスメ業界の課題と4つの重要対策

2025年02月25日

この記事は約8分で読めます。

コスメ業界の現在のリピーター獲得における課題とは?

化粧品業界はトレンドの移り変わりが非常に速く、常に市場動向を把握し続ける必要があります。

また、ブランドの多様化や新商品の頻繁な登場により、顧客の浮動化が進んでいます。消費者はより多くの選択肢を持つようになるため、ロイヤリティの向上が一層難しくなっているのが現状です。

またトレンドが短期間で移り変わるため、消費者自身も新たな商品、最新の流行りを常にチェックしています。そのため、特定のブランドに対する継続的な支持を得るのがますます困難な状況となっているのです。

実際、株式会社ADDIXが行った調査によると、「現在使用している化粧品ブランドを今後もぜひ使い続けたい」と回答した人は全体の約51.0%にとどまり、残る約49.0%は「きっかけがあれば他のブランドに切り替えても良い」と考えていることが分かりました。

このように、消費者の多くが現在使用しているブランドに対して高いロイヤリティを持っていない状態です。そこで、今回の記事では、化粧品業界における消費者のリピートを促進する施策やポイントについてまとめていきます。

顧客がリピートする理由は?

商品そのものが持つ具体的な魅力

  • 実際に効果を感じられた: 肌の改善や悩みの解消など、具体的な結果を実感できること。
  • 香りや色が好き: その商品にしかない色や香りを体験できること。
  • 使用感が良い: テクスチャーや肌なじみが優れているなどの機能的な特長。

これらの商品特性に基づく魅力は、消費者にとっての直接的なリピート理由となります。

そのため、商品開発においてはトレンドや市場調査を行い、顧客のニーズを的確に捉え続けていくことが重要です。また、顧客一人ひとりにパーソナライズされた提案を行うことで、商品自体の魅力をさらに高めることが期待できます。

誰のためのブランドなのか?

トレンドの移り変わりが早い化粧品業界では、やはり商品力がリピート率向上の最重要ポイントであると言えます。では商品力頼りにならずに、ブランドそのものを愛してもらうためにはどのようなことができるのでしょうか。

ひとつの例として、Drunk Elephantというスキンケアブランドをご紹介します。

同ブランドは、「肌本来の健康を取り戻す」という哲学を持つライフスタイルブランドとして多くの人気を集めています。

Drunk Elephantの創始者であるティファニー・マスターソンは、自身が敏感・乾燥肌のトラブルに悩んでいました。

これを原体験にブランドを立ち上げ、商品からは、6つの原材料 「Suspicious6 (=疑わしい6つの成分)』として、エッセンシャルオイル、アルコール、シリコン、紫外線吸収剤、香料/色素、ラウリル硫酸ナトリウム(界面活性剤)を徹底的に排除しました。

その結果、安全性と生体適合性(生体組織と親和性があり異物反応や拒絶反応などを生じない性質)、pHバランスを重視して処方することで、敏感肌や乾燥肌に特化した効果的なスキンケアを提供することに成功したのです。

創業者が自身の経験を踏まえた製品を作り、同じ悩みを持つ顧客の共感を得ることで、ロイヤリティの高いファンを獲得した事例です。

このように、「誰のためのブランドなのか?」を明確にし、実際に商品や行動にその哲学を反映させることが、ブランドロイヤリティ向上の第一歩となります。

リピーター獲得のための4つの重要戦略

1. パーソナライズ戦略

パーソナライゼーションは、化粧品業界における顧客ロイヤリティ向上の鍵となる戦略です。近年、AIやデータ解析技術の進化により、消費者一人ひとりの肌質や悩み、理想とする自分像に基づいた個別提案が可能になりました。

このような技術の発展により、顧客は「自分のために作られた」と感じられる特別な体験を得ることができ、最終的にブランドに対する信頼や愛着が深まる一助となります。

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資生堂の一人ひとりの肌悩みに寄り添った提案

グローバル企業へと成長した資生堂は、2022年にAIを活用した肌解析技術を導入し、化粧品のパーソナライズを実現させました。このサービスは、肌質や悩みをAIの技術を使って詳細に分析し、顧客一人一人のニーズに応じた化粧品やスキンケア商品を提案しています。

ブランドとしてこうしたアクションを取ることで、消費者に対しては、他商品よりも自分の肌を深く理解してくれる、というイメージづけにもなります。その結果、顧客の長期的なロイヤリティを向上させることにもつながるのです。

また、このようなAI技術だけではなく、アンケートなどを通じてパーソナライズされた商品提案をすることで「このブランドは自分を理解している」といった顧客の信頼と安心感を得ることができ、競合との差別化をはかることができます。

「なりたい自分」を実現するパートナーとしての役割をブランドが果たすことでブランドロイヤリティを向上に繋がります。

「自分専用のシャンプー」といった特別感

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また、日本初のパーソナライズヘアケアブランドであるMEDULLAは、オンライン診断を活用し、顧客一人ひとりの髪質や悩みに合わせた商品を、約3万通りの組み合わせの中から提供しています。診断では、髪のダメージレベルや頭皮の状態、さらに理想の仕上がりを入力することで、自分専用のヘアケアアイテムを作ることができます

さらに、一度目の購入時だけでなく、二度目以降の購入では顧客のフィードバックを反映し、顧客に寄り添った商品を提案することで、パーソナライゼーションを進化させています。この継続的なカスタマイズにより顧客満足度を高め、ブランドロイヤリティの向上につなげています。

2. サンプルの提供

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またリピーター獲得への取り組みの一環として、顧客の悩み別に個別化されたサンプルを提供することも効果的だと言われています。アットコスメによると約90%の顧客が「サンプルを試してから購入したい」と答え、また同じく90%の顧客が「サンプルを試せずに購入したら失敗した」と答えた調査結果があります。

このことからパーソナライズされた化粧品の提案そしてそれを一度試した普段のスキンケアなどの基礎化粧品との相性を確認することで最適な商品に巡り会え、リピート率を向上する可能性が考えられます。

また、サンプルの提供をすることで、フリマアプリなどで安価に試そうとする行動を防ぎ、ブランドの価値を守ることに繋がります。

3. サブスクリプションモデルの導入

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サブスクリプションモデルの導入は、顧客との長期的な関係を構築するための有効な手段です。定期購入プランを通じて、初回購入時の割引やポイント特典などのインセンティブを提供することで、顧客の継続利用を促進できます。また、柔軟なキャンセルポリシーを設定することで、消費者の心理的なハードルを下げ、安心してサービスを利用できる環境を整えることが重要です。

さらに、サブスクリプション専用商品や限定特典を提供することで、会員に特別感を与え、ブランドへのロイヤリティを高めることが可能です

例えばChristian Diorが提供する会員限定サービスは、バースデーギフトやシーズナルギフトの提供、個別カウンセリングなどのサービスが挙げられます。このように、会員限定の特別なサービスを提供することで顧客満足度を向上させ、リピーターの増加に繋げています。

4. 正しい使い方を伝授~化粧品の効果を最大化〜

化粧品の効果を最大限に引き出すためには、適切な使い方・使用量・タイミングを守ることが重要です。しかし、多くの顧客はブランドを変えても、以前の商品と同様の使い方を続けてしまいがちです。そこで化粧品会社としてはいかに正しい使い方を伝え、実践してもらうかが課題となります。

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実は、公式SNSやインフルエンサーマーケティングを活用し、正しい使い方を発信することも、商品の効果を最大化し、リピート率向上につなげるひとつの施策になるのです。

例えば、メイベリン ニューヨークの「SP ステイ ヴィニル インク」は、使用前に振ることで膜形成成分と高濃度ピグメントが混ざり、色・艶・仕上がりが長持ちする仕様になっています。この特性を正しく伝えるために、公式サイトやインフルエンサーを通じて「シャカシャカ振る」というキーワードとともに情報を発信し、効果的な使い方を広めています。

このように正しい使い方を伝えることで、顧客が本来の商品の効果を最大限に実感できるようになり、満足度やリピート率の向上につながります。

長期的なロイヤリティ向上を目指すには?

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ブランド戦略において、無意識のうちに価値を創造することは、顧客との新たな接点を生み出し、競争の激しい市場において差別化を図る上で非常に重要です。特に、長い歴史を持つブランドにとっては、時代の変化や顧客層の移り変わりに適応するための柔軟性が求められます。

雪肌精の復活

例えばKOSEの雪肌精は、類似コンセプトの競合が増えたため、売り上げの低迷が続いていました。そこで、若い世代を対象にマーケット調査を行ったところ、若い世代は容器の見た目などにも気を使っていることが分かりました。

その結果、雪肌精は、ブランドボトルをシンプルなデザインに刷新したり、ブランドロゴもKOSEからSEKKISEIに変更することで、既存のユーザーを逃すことなく、新たに若い世代からの支持を集めることに成功しました。

ファシオの変革

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また同じくKOSEブランドであるファシオは、発売開始は若年層を中心に人気を集めていましたが、それから20年間が経過し、主要顧客が40代以上となっていました。

実際にマーケット調査をしたところ、現在の若年層からは「母親世代が使っているブランドのイメージ」という声が多く、若年層への訴求ができていないことがわかりましたこの課題をもとに新しいブランドコンセプト「なじむ、らしさ、つづく」といった自分らしさを主軸にした訴求を行い、若い世代からの支持を集めることに成功しました。

終わりに

トレンドの変化が激しい化粧品業界はリーピター獲得が難しくなっているのが現状です。そこで「商品の価値」と「ブランドの価値」の両面を強化し、パーソナライズ戦略や顧客内でのコミュニティ構築などを活用することが重要です。

また、ブランドの進化と消費者の心理的ロイヤリティを高める施策を取り入れることで、顧客の長期的なリピート率向上に繋げることができます。

参考文献

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