blog»活用法&レシピ»アハ!体験を導くWebサービスのディレクション方法
Takashi Ando
アルコール二段 グロースチーム
2020年10月18日
この記事は約7分で読めます。
サービスマネージャーであるあなたは、製品の価値を熟知しており、それを寝言のように暗唱することができるかもしれません。
しかし、最高のWebディレクターは、ユーザーの視点からその価値について考えています。彼らは、価値が必ずしも明白ではないことを知っており、ユーザーが価値を理解できるようにするために、常にユーザーと協力すべきであることを知っています。
だからこそ、「アッという瞬間」を見極めることがサービスの成功の中心になるのです。
aha moment(アハ・モーメント)とは、突然の洞察や発見の瞬間のことです。ソフトウェアでは、新しいユーザーが最初に製品の価値と、なぜそれを必要としているのかに気づく重要な瞬間です。
これは感情的な瞬間であり、ユーザーがまた来たくなるような強力な印象を与えるには十分なインパクトを与えることができます。これは、ユーザーが初めてサービスを試した時のある時点で起こるはずです。
シンプルなユーザージャーニーを持つライドシェアアプリの場合、下図ようになります。
このガイドでは、アハ!体験を起こしていくプロセスを説明し、あなたの仕事を少しでも楽にするための方法をご紹介します。
では、新規ユーザーに「アハ!」と言ってもらうためのハウツーガイドを具体的に見ていきましょう。
ユーザーが最初にあなたのサービスと接触したとき、ユーザーはすぐに必要としていたことが解決されることで、そのサービスがどのような価値をもたらすのかを理解していきます。通常、利用者はこの価値がどのようなものになるのか、ある程度の考えや知見を持っています。
物事がカチッと音を立てた瞬間、つまり、ユーザーがサービスの恩恵を本当に受けられることに気付いたとき、それがアハ!という瞬間です。ユーザーはこの瞬間を自発的に認識しているかもしれませんし、無意識のうちに起こるかもしれません。どちらにしても、アハ!の瞬間は、評価しているユーザーをアクティブなユーザーに変えるスイッチであり、多くの場合、このスイッチが離脱しないユーザーと最終的に離脱してしまうユーザーを分けるものです。
あなたの仕事は、どのような行動が価値の発見と相関関係があるのかを見つけることです。そして、高い相関性を見つけたら、より多くのユーザーを「アハ!」を誘発する行動に誘導するための計算された調整を行うことができるようになります。
独自の分析プラットフォームを持っているか、Google Analytics、Ptengineなどのサードパーティツールで分析していけばコンバージョンしたユーザーがその他のユーザーと行動的に何が大きく違っているのかを発見していくことができます。そして、そのような分析を行うことが必要です。
・オンボーディング体験を終了したかどうか
・オンボーディングの後、サービスの閲覧を続けられたか
・コア機能を利用したか
・他のユーザーとつながったのか
ユーザーの維持に関連すると思われる10~20の行動(または行動の組み合わせ)のリストを作成してください。あなたが探しているのは、離脱するユーザーが示す行動だけではなく、離脱するユーザーとそうでないユーザーが示す行動のセットです。それは、以下のようなものです。
・多くの維持ユーザーと、多くの解約ユーザーで見られた行動=相関関係なし
・少数の維持ユーザーと少数の解約ユーザーで見られる行動=相関関係なし
・多くの維持ユーザーと少数の解約ユーザーで見られた行動=相関関係あり
例えば、これにそって私たちも自分たちのPtengineの利用されている機能と利用ユーザーの維持の関連性を調べました。
下図は私たちのサービスを習慣的に利用しているユーザーとそうでなくなってしまったユーザーにおいて、特定機能を利用する行動をしていた場合の相関関係を出したものです。
ページグループ機能を利用している場合、右側のstable(維持)状態の場合は0.36という係数が出ており、dropping(離脱)状態の場合は0.16が出ています。
つまり、多くの維持ユーザーで利用傾向が高く、逆に解約ユーザーでは利用傾向が小さいことからページグループ機能を利用したユーザーは維持に対して相関関係がある行動であることがわかります。同じようなことはコンバージョンを利用しているユーザーでも見られました。
※ページグループ機能を利用している維持/離反ユーザーの割合
※コンバージョン機能を利用している維持/離反ユーザーの割合
行動とリテンション(維持)の相関関係は、正しい軌道に乗っていることを示す最初の手がかりですが、それがすべてではありません。サービスの初期段階であれば、生のデータだけで結論を出すほどの大規模なユーザーベースを持っていない可能性が高いです。さらなる調査で仮説を確認したり、調整したりしましょう。
データからすでに学んだことを補足するために、トップユーザーに定性的なフィードバックを求めてみましょう。特定の行動とリテンション(維持)の間に相関関係があることが数字で示されている場合、ユーザーはその理由を伝えることができます。
例ですが、あるソフトウェアにおいてユーザーは通常、メッセージング機能とカレンダー機能の両方を使っていることがわかtたとします。しかし、実際にユーザーに話を聞いてみると、チームのスケジュール管理が簡単にできることが最大のメリットであることが判明するような場合があります。
それが理解できれば、単純なデータをもとにして2つの機能を同時にユーザーに押し付けるのではなく、最初に全員参加のスケジューリングでユーザーを誘導していくことができます。
このように、ユーザーと話すことでコンテキストが得られるので、行動の背後にあるモチベーションを理解することができます。
私たちもアカウントヒアリングプログラムというユーザーとの対話を通して得られる情報を定期的に取得しており、お客様が利用した背景や何に価値を感じているのかの詳細を把握しながら全体サービスの最適化を進めています。
(下は実際のアンケート内容の一部です)
電話で人と話すことで、数字ではわからない補足的な情報を得ることができます。顧客が他の選択肢を検討した瞬間や、製品を初めて使ったユーザーの体験で印象に残ったこと(印象に残らなかったこと)を知ることができます。
サービス内のどのアクションやイベントがアハ・モーメントを引き起こすかを知ることで、よりカスタマイズされたオンボーディング・エクスペリエンスを作成することができます。
例えば、ニュースメディアなどでも個人に合った体験を作るための工夫がされています。こちらはスマートニュース操作画面の一つですが、自分に合ったニュースが自分に合ったタイミングで配信されるための設定をオンボーディングの中で経験することができます。
では、どのようにしてユーザーをパーソナライズすることができるのでしょうか?その方法をご紹介します。
2つまたは3つのバイヤー、利用者プロファイルを作成し、ユーザーのタイプごとにオンボーディングを微調整します。
クラウドコミュニケーションAPIを提供するTwilloの利用者は開発者など専門知識のレベルは多岐にわたるため、Twilioはプログラムを充実させても適切な恩恵を受けられない可能性が高いです。その代わりに、Twilioではユーザーが「やるべき仕事」をメニューから選択できるようにしています。このようにすることで、この巨大で汎用性の高いプラットフォーム上で、ユーザーは特定のユースケースからガイドを受けることができるようになっています。
あなたの「アハ!」の瞬間をわかりやすく先に出してしまうという手法もあります。サインアップページやサービス内チュートリアルなどでプラットフォームの一部を試すことなどができると、利用開始前の障壁を崩すことができます。
例えば、日本でもコミュニケーションサービスとして普及しているSlackでは、ホームページから直接どのような形で利用できるのかを試せる画面が存在しました。 (現在は動画になっていますが、操作を試せるという意味ではほぼ同じような状態です)
下の図の各チャネルが移動していき、プロジェクトごとやチームでの利用方法、また通知機能などがどのように行われるかをほぼ体験できるようになっています。
このような仕組みはユーザーが通常の、例えば登録した後のオンボーディングを省略してアハ!の瞬間を始められることを保証できます。これは特にあなたのリードをおもてなしするのに最適な方法です。
新規ユーザーにはすべての体験を提供したくなるかもしれません。しかし、ユーザーは一度にすべてのサービスを体験する必要はありません。
説明でユーザーを圧倒するのではなく、最も重要なアクションのいくつかを、邪魔にならないツールチップなどを使ってガイドしましょう。
いかがでしたでしょうか?😄
サービスを運営するディレクターやデザイナー、開発者にとって利用するユーザーがどこで価値を感じてくれるかを特定させていくことは顧客体験向上のために重要です。一方で、どこにその体験があるかを体系的に探していく、理解していくのは実は非常に頭を悩ませるポイントです。この記事を参考にしてもらいながら、適切なユーザーの分析とオンボーディングなどの施策を打ち出せるようになってもらえれば嬉しいです。