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年間654.6%成長!シューズブランドVIVAIAの広告・LPの最適化戦略と徹底的なユーザー理解

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大森 葵

2024年04月19日

この記事は約7分で読めます。

はじめに

2023年のSimilarWebの「Digital 100」ランキングによると、VIVAIAはアメリカにおけるアパレル・アクセサリー部門で、654.6%という驚異的な成長率を記録し、業界から大きな注目を集めました。しかし、この急成長は偶然ではなく、巧みな戦略に裏付けられたものなのです。

VIVAIAとPtengineについて

VIVAIAは2020年6月に設立され、3年足らずでDtoC業界のフットウェアカテゴリーで世界最速成長を遂げたブランドです。洗練されたデザインとサステナビリティへの取り組みだけでなく、独自のデジタル戦略で驚異的な成長を続けています。

VIVAIAの躍進は、迅速かつ継続的なデータに基づく顧客インサイト分析や、それに基づく商品提供戦略、そしてデジタル体験の最適化の必要性を物語っています。こういった要素は、ファッション業界のように、トレンドサイクルが短く、顧客ニーズが急速に変化する環境では特に重要です。

PtengineとVIVAIAはパートナー関係にあります。これに関するVIVAIAの共同創設者であるJeffのコメントは下記の通りです。

この記事のポイント
1. 広告 x LPの訴求マッチ 広告に戦略的なLPOで流入獲得を最適化
2. LPに絞って徹底的にA/Bテスト 商品訴求における勝ちパターンを確立
3. パーソナライズ戦略でユーザーに寄り添ったブランドづくり
4. ユーザーの声が最優先 飽くなきユーザー体験の向上がエンゲージメントを強化する

1. 戦略的なLP運用で流入獲得を最適化

VIVAIAは創業以来、個々の顧客に合わせた体験を提供するために、Webサイトの分析やトラフィックの重ね合わせを通じて、いわば「十人十色」のアプローチを取ってきました。これにより、早い段階での広告コスト削減だけでなく、異なる顧客それぞれに対する深い理解が可能となっています。

従来のように広告の最適化だけではなく、各チャネルへの流入を担うLPも調整しないと、重要な機会損失が生じる可能性があります。

チャネルが異なれば対象者も異なり、キャンペーンが異なれば伝えるべき内容も変わるものです。自明のことと思われますが、DtoC業界ではこのような綿密な運用をしているケースが比較的少ないのも事実です。

例えば、下の左の画像は、VIVAIAのシューズの多彩なカラーバリエーションが焦点です。ユーザーがこのバナーをクリックしてLPに進むと、ファーストビューでも広告の内容と合致したコンテンツが表示されます。

同様に、以下の左の画像は、シューズの快適さをアピールしています。ここでも、ユーザーがLPに入ると、ファーストビューには、広告での訴求とマッチした内容が表示されるようになっています。

これは一例に過ぎません。VIVAIAの初期段階での目標は、広告とLPそれぞれの訴求の整合性を保つことと、ユーザーが最初に接触したコンテンツをフックにコンバージョンにつなげることでした。

また社内においても「テスト」を行いました。つまり、PtengineをLPOのワークフローに組み込む前後における成果へのインパクトを検証したのです。そして、ワークフロー自体の見直しも経て、広告のコンバージョン率が大幅に向上するという結果を得ることができ、最終的には社内のSOPも整えていきました。

2. A/Bテストで「ランディングページの新しいモデル」を探る

VIVAIAは、デジタル成長への取り組みで、常に「データに基づく検証と迅速なA/Bテスト」を原則とし、オンラインショッピングのプロセスに特に力を入れています。

Monetate社の分析によれば、商品詳細ページからの流入では、ユーザーのコンバージョンを引き出すのが難しいことがあります。

これは、商品詳細ページがさまざまな商品を紹介していることが主因です。つまり、ユーザーはページの中から自ら自分に合う商品を見つけ、それを購入する理由を見つけなければならないのです。

その結果、ユーザーの購買意欲を引き出す効果が著しく低下します。商品詳細ページには離脱ポイントも多く、ユーザーがサイトのコンテンツに焦点を合わせるのが難しい状況です。

それに対して、LPの目的は焦点を絞り込み、ターゲットユーザーに「説得の環境」を提供し、商品を購入してもらうことです。しかし、多くのブランドは今でも、商品詳細ページやリスティングページを主要な流入経路としています。

VIVAIAは早期からこの課題に気づき、LPに注力する方針に決めました。常にA/Bテストを通じて、ユーザーのショッピング・プロセスの更新・最適化を続けています。

A/Bテストの対象となるのは、画像やコピーライティング、商品タイトル、訴求ポイント、商品写真のアングル、ランディングページ全体のレイアウト、CTAボタンのデザインなど、ページ上のほとんど全ての要素です。

また、A/Bテスト実施後には、レポートから結果を掘り下げ、ユーザー行動についてさらに詳しく分析を行い、得られたインサイトをその後のコンテンツやキャンペーンに反映させるサイクルが確立されています。

日々の緻密な検証と分析により、VIVAIAのオンラインストアでのショッピング体験はますます進化しています。

3. パーソナライズ戦略の実施

VIVAIAは、ユーザーのパーソナライゼーションも重要視しています。ユーザーとWebサイト上でのインタラクションが増えるにつれ、ユーザー属性もより多様化し、分岐していきます。

そのため、積極的にユーザーをセグメントし、セグメント単位でパーソナライズされたコンテンツを提示していくことが、彼らのブランドに対するエンゲージメントを高めるためにも非常に重要なのです。

それぞれのユーザーに対して表示されるコンテンツをパーソナライズして分類する切り口はどうなるでしょうか?

例えば、ユーザーAがFacebook上で、シューズの快適さを訴求する広告をクリックし、LPに入ったとします。この時点で「Aというユーザーは、快適なシューズに関心を持つかもしれない」という情報を獲得することができます。

しかし、その次に初回購入割引15%オフのポップアップが表示された場合はどうでしょう。

この時のAは、まだブランドや製品を「理解している」段階と仮定すると、一見魅力的に見える15%割引のオファーは、Aにとっては有益ではない可能性があります。

このように、ユーザーの行動やモチベーションは、タイミングによって大きく異なります。また、何度もページを訪れていてもアクションを起こさないユーザー、ショッピングカートに商品を追加したまま、決済には至らないユーザー、さらにはサイト上で複数回購入するユーザーなど、さまざまです。

重要なのは、上記のようなユーザーを一例にさまざまなユーザー行動に対してセグメントを分け、それぞれに対してサイト上でも適切なコミュニケーションを行うことなのです。

VIVAIAは、ユーザーの流入元や、ニーズ、そして実際のサイト上での行動など、さまざまなデータに基づいてサイトおよびポップアップの表示内容をパーソナライズします。

このパーソナライゼーション戦略は、ユーザーとブランドとのインタラクションを強化し、エンゲージメントを高めるだけでなく、よりユーザーに寄り添った「人間的なブランドである」というイメージ作りにもポジティブに働きます。

4. ブランドとユーザーの距離を縮める

VIVAIAはこれまでに100種類以上の異なるランディングページ(LP)を使ってユーザーリサーチを行い、総計100万人以上のフィードバックを収集しました。

これらは商品の改善やマーケティングキャンペーンだけでなく、すべてのコンテンツの基盤であり、社内では最優先事項(P0レベル)と認識されています。

VIVAIAにとって、ユーザー体験の改善・向上は常に第一であり、ブランドのインパクトを継続的に改善するために不可欠なものなのです。

ユーザーのフィードバックはすべて「事業発展のための重要な要素」と位置づけられています。ユーザーからのフィードバックや提案が寄せられると、VIVAIAチームは関連する製品のメンバー全員を集めて議論を行います。これにより、VIVAIAは市場の変化に迅速に対応し、製品とサービスの品質を継続的に向上させています。

ただし、フィードバックを収集するだけでなく、それを製品開発や購買体験の改善に活かさないブランドも存在します。

一方、VIVAIAは、マーケティングやオンラインでの購買体験など、ユーザーとのあらゆるタッチポイントを最適化するためにリサーチ結果を活用しています。

それぞれのリサーチを通じて、ユーザーの回答を取得するだけでなく、その回答をしたユーザーの属性なども収集し、ユーザーラベル管理システム全体を充実させることで、ユーザーへの理解を深めていきます。

終わりに

今後DtoC事業を展開したり強化したりする企業やブランドにとっても、今後、VIVAIAの経験から学べることは多いのではないでしょうか。

まず、販売面においては、価格戦略に頼らずにユーザーを惹きつけるために、商品のユニークかつさまざまなセールスポイントを伝える広告クリエイティブの作成に重点を置いています。また、ターゲットユーザーのニーズに応え、それにマッチした商品を見つけやすくすることに注力しています。

これは、単なる価格競争から脱却できるだけでなく、ブランドとして提供する価値や競争力を定義できます。売られているのは「製品」ではなく、ユーザーのニーズに応える「ソリューション」なのです。

一方ブランディングでは、ユーザーとの継続的な関係構築を重要視しています。ユーザーとの感情的なつながりを確立し、ユーザー体験を最適化し続けることで、ユーザーに愛着を持ってもらい、彼らの「第一の選択肢」となるように尽力しています。

過去1年間、VIVAIAは合計でおよそ1,000ものA/Bテストを実施し、何百件ものユーザーリサーチを行い、何百万ものユーザーフィードバックを収集してきました。そしてそれらから得た結果をすべてのコンテンツに還元し、最適化を重ねてきました。

戦略的な広告およびLPの運用、質も量も驚異的なA/Bテストの実施、緻密なパーソナライズ、そしてユーザー体験の最適化への強いこだわりに支えられ、今もVIVAIAは着実に成長しています。

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