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「ABテスト大全」:基礎から応用までの完全ガイド

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Takashi Ando

2024年11月29日

この記事は約7分で読めます。

はじめに:ABテストがマーケティングに必要な理由

現代のマーケティングにおいて、ABテストは顧客体験を向上させ、意思決定を科学的にサポートする重要な手法の一つです。

広告クリエイティブやランディングページ(LP)、メールマーケティングに至るまで、ABテストの応用範囲は広く、適切に運用することでコンバージョン率(CVR)の向上や顧客満足度の向上につながります。

しかし、ABテストを導入しても結果が思うように出ないケースも多々あります。その原因の多くは「顧客インサイトの不足」「運用の誤解」にあります。

本記事では、ABテストの基本的な考え方から応用技術、さらには顧客インサイトを活用した効果的な実践方法までを徹底解説します。

1. ABテストとは?基本的な考え方と実施の仕組み

ABテストとは、2つ以上の選択肢を比較し、どちらがより良い成果を生むかをデータを基に検証する方法です。1つの要素(例:CTAの色や文言)だけを変化させ、その他の条件を固定することで、影響を与えた要因を特定できます。

ABテストの目的

  1. データに基づいた意思決定:主観的な判断ではなく、数値で効果を測定
  2. 顧客理解と顧客体験の最適化:訪問者のニーズを理解し、体験も向上
  3. コンバージョン率の向上:目標達成率を引き上げる

適用範囲の具体例

  • ランディングページのファーストビュー(画像、キャッチコピー)
  • メールの件名や本文
  • 広告クリエイティブ(画像、キャッチコピー)
  • ウェブサイトのナビゲーションや商品ページ

2. ABテストの落とし穴とその回避法

いきなり実施に入る前にマーケターやクリエイターが実際には誤解して運用している危険な側面がABテストにはあるため、まずは落とし穴、つまりは罠について解説します。

(1) ABテストの目的と種類を理解しない罠

多くのマーケターがABテストを「クリエイティブの勝敗を決めるツール」としてのみ捉えてしまいがちです。この考え方は間違いではありませんが、非常に限定的です。

ABテストは単なる「AかBか」を選ぶだけの手法ではなく、「顧客のニーズを深掘りし、新たな洞察を得るためのプロセス」として活用するべきです。

主な誤解と問題点:

  • 短期的なテスト結果に過度に依存し、その結果、運用を早期に終了してしまう
  • ユーザーの多様性を無視し、限定的なクリエイティブに偏る
  • コンセプトの多様性や顧客の変化に対応できず、継続的な改善ができない

回避策:

  1. テストの目的を再設定: ABテストを「新たな洞察を得るための継続的なプロセス」として捉えましょう。仮説検証サイクルを繰り返し、顧客の行動変化に即応できる体制を整えることが重要です。
  2. 種類に応じた適切な手法を選択:
    • 単変量テスト(ABテスト): 1つの要素を変更してその影響を測定
    • 多変量テスト: 複数の要素が相互にどう影響するかを分析
    • リダイレクトテスト: コンセプトが異なる2つのページを比較
ABテストの目的と種類を理解しない罠

(2) 適切な目標設定ができていない罠

ABテストの成功は、正確な目標設定にかかっています。しかし、多くの場合、「目標が曖昧」だったり、「ゴールが単一で小さすぎる」ため、十分なインサイトを得られないことがあります。

主な問題点:

  • CVRのみを重視し、中間指標(クリック率や滞在時間)を無視
  • サンプルサイズが不足し、統計的に有意な結論を得られない
  • ゴールが適切でないため、テストが終了しても次のアクションにつながらない
適切な目標設定ができていない罠

回避策:

  1. 複数のゴールを設定:
    • ファーストビューの通過率(FV通過率)
    • CTA(コールトゥアクション)のクリック率
    • フォーム通過率や最終的なCVR
  2. サンプルサイズを計算: サンプルサイズ計算式を活用し、信頼区間と検出力に基づいて必要な期間とサイズを明確化します。必要サンプル数 = (1.96 + 0.84)^2 × ((2×B + U) × (1-B-U)) / U^2 ※ここで、Bは基準CVR、Uは期待するCVRの上昇率です。
ABテストのサンプルサイズの計算方法

(3) 平均体験の罠

ABテスト結果を「母集団全体の平均的なパフォーマンス」として解釈してしまうケースが多く見られます。しかし、異なる属性や行動を持つサブグループを無視することで、重要な顧客インサイトを見逃してしまいます。

具体例:

  • 新規訪問者に対して効果が高い施策が、再訪問者には効果がない場合、平均値だけを見ているとこの差に気づけない
平均体験の罠

回避策:

  1. セグメント別のABテストレポート分析:
    • デバイス(モバイル/PC)
    • 流入経路(オーガニック/広告)
    • 新規訪問者/リピーター
  2. ヒートマップの活用: ユーザーの行動パターンを視覚化し、どのセグメントがどのコンテンツに興味を持っているかを把握します

(4) 統計的優位性を理解しない罠

「短期間で結果を判断する」「勝敗のみでテストを終える」といった運用では、十分な統計的優位性を確保できず、誤った結論を導きかねません。

主な誤解:

  • 勝ち負けだけで判断し、効果の継続性を確認しない。
  • サンプルが小さい段階で結論を出してしまう。

回避策:

  1. ベイズ統計の活用: リアルタイムでデータを更新し勝率を推定するベイズ統計を活用すれば、小規模なデータでも意思決定が可能になります
  2. 継続的なテスト: 一度の結果に頼らず、定期的に再検証するプロセスを組み込む
ABテストの統計的優位性の判定方法

これらの落とし穴を避けることで、ABテストをより戦略的に活用でき、マーケティング成果の最大化に寄与します。具体的なテスト設計のサポートやツールの選定についても適宜見直していくことが重要です。

4. ケーススタディ:SaaS企業の不安解消で登録率を改善

課題:CTA(コールトゥアクション)の文言改善により登録率向上を目指す

あるSaaS企業のトップページにおける資料請求率が伸び悩んでいました。分析の結果、再訪問者は一定の登録行動を見せる一方、新規訪問者の登録率が著しく低いことが判明しました。この課題に対し、以下の改善策を試みました​。

施策:CTA文言の変更

ABテストを実施し、次のような2つのパターンを比較しました:

  • パターンA:シンプルな文言
    「詳しい資料説明を資料で見る」
  • パターンB:不安を払拭する文言を追加
    CTAの上部にどのような資料かを説明し、安心感を醸成
CTA文言のテスト

実際の結果:勝率65%という改善余地のある結果

上図の通り、パターンBはパターンAに比べて勝率が65%となりました。ABテストでは通常最低でも70%以上、できれば90%以上の勝率が欲しいところです。

この施策は少し伸びる余地がある、という結論に多くの方々が帰結しそうですが、ABテストは顧客理解のプロセスです。ここから本当にこの結果が全体として正しい理解かを罠を回避しながら見ていきます。

関連する落とし穴と改善ポイント

平均体験の罠
  • 問題点: ABテスト結果を母集団全体の平均で評価していたため、再訪問者と新規訪問者の違いを見落としていました

実際に調べてみると、CTAの安心感は再訪問者に対しては伝わっていましたが、新規で訪問される方に対しては高い勝率を誇るわけではないとわかりました。

ここから導き出せるのは全体の65%の勝率は新規訪問の方々に対しての理解が足りない結果、生じている話だとわかります。したがって、新規の方々は安心感ではない部分を重視している可能性が高いと推測できます。

新規訪問と再訪問でのABテストの結果の違い

こちらのサイトでは、新規訪問の方の行動を調べると、まだサービスのことをあまりわかっていない段階でCTAに安心感を与えても意味がないことを理解し、ファーストビューのキャッチコピーの曖昧さを避けることが必要だという結論に至りました。ABテストはデータに基づく意思決定を可能にし、顧客体験の向上やコンバージョン率改善に直結します。本記事は、ABテストの基本、よくある落とし穴と回避法、実際の成功事例を紹介するABテストの完全ガイド。さらに、Ptengineのセグメント別分析やヒートマップ連動も含めた「より深い顧客理解」を叶える方法も。

そこから新規の方が何のサービスかを理解できるようにするために、何に効果があるかを最初の段階で明示するキャッチコピーに変更した結果、65%であった勝率が90%以上までに向上させることに成功しました

キャッチコピーのABテスト

5. Ptengineを使ったABテスト実施方法

さいごに、実際にPtengineではこれらの罠を回避しながら快適にABテストを実施することができますのでご紹介しておきます。

目的に応じたテスト設計

PtengineではABテスト、リダイレクトテストが可能です。ページにおけるABテストだけではなく、Web接客に代表されるポップアップやバナーなどもABテストの対象にできますので施策を複数パターンで検証を行なっていくことが可能です。

Ptengineの目的に応じたテスト設計

テストにあたる最低サンプル数の考え方

必要なサンプル数の目安は下図の注意書きにあるように各パターンのゴールに到達する人数が30人以上を記録するまでが継続的な傾向が出てくる判断で良いです。

Ptengineの最低サンプル数の目安

お客様セグメントごとのABテストの結果判断が可能

平均体験の罠で解説したとおり、ABテストをただ全体結果判断に利用してしまうと実際に改善に結びつく貴重な洞察を自ら手放してしまうことと言っても過言ではありません。

Ptengineの優れた機能として持っているのが、お客様分類ごとのテスト結果の見える化です。新規やリピートなどだけではなく、広告の流入ごとなどお客様の属性が変わるチャネルごとで分類をしていくことが可能です。

PtengineのABテスト結果のセグメント比較

まとめ:科学的なアプローチでマーケティングを進化させる

ABテストは、データを基にマーケティング施策を改善する最強の手法です。しかし、成功の鍵は単なるデータ比較ではなく、顧客インサイトを深く理解することにあります。

今回ご紹介した罠を回避しながら効果的な運用を継続的に行うように心がけるようにしましょう。得られた知識を活用し、あなたのマーケティングを次のステージへと進化させてください。

PtengineでABテストを始めましょう

初めてABテストの挑戦する方も、今まで多くやってきた方にもPtengineのABテストはオススメです。

理由は今回特に解説した平均体験の罠のようにお客様のセグメントごとにABテストを評価できることは顧客理解と密接に関連でき、インサイトを得ることが可能です。

また、ABテストの各パターンごとにどのように反応したかなどのヒートマップも連動しており、オールインワンでマーケティング活動の改善がすぐにできます。

ご興味をお持ちの方は、ぜひ製品サイトよりご覧ください。

Ptengine製品サイト

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