blog»ブランド・マーケティング»現地化 or 標準化?グローバルマーケティング戦略で考慮すべき5つの要素と成功事例
大森 葵
2025年02月14日
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グローバル化が加速する現代、企業にとって海外市場への進出は、事業拡大の大きな機会となります。しかし、各国のビジネス環境は異なり、日本国内で成功した戦略がそのまま海外で通用するとは限りません。
そのため、進出先の現地環境を十分に調べ、自社の状況と照らし合わせながら戦略を練る必要があります。中でも特に重要なのが、グローバルマーケティング戦略です。
複数の国や地域を対象に多様なマーケティング戦略を展開することを指し、大きく二つの戦略に分類できます。
標準化と現地化が対立構造にあるため、どの要素を標準化し、どの要素を現地化するかのバランスが重要となります。
標準化か現地化を検討する際には、以下の五つの要素に着目しましょう。
自社製品が進出先の消費者習慣、製品規格と経済状況などに適合しているかどうかを検討します。具体的には、製品の仕様やデザインが現地の基準や文化に合っているか、さらに法令や規制に適合しているかを確認することが重要です。
事例分析:イケア
イケアは、グローバルで統一された商品企画と開発を基本としつつ、店舗では「ルームセット」を用いて実際の部屋を再現しています。しかし、進出先の国によって住居事情は異なり、日本では住宅が狭いことから、多くの消費者はコンパクトな家具を求めています。
そこでイケアは、日本の住宅に直接かつ定期的に訪問するなど、日本の住宅事情を徹底的に調査しました。
その上で、グローバルな商品ラインナップの中から、限られた居住空間を有効活用できる製品を厳選し、必要に応じて日本限定規格の商品も開発しています。また、ショールームの間取りも日本の住宅事情に合わせて調整することで、消費者が自身の生活空間をイメージしやすくなっています。
この事例から、イケアは日本の住環境に対応した製品の選定・開発とショールームの展開という現地化戦略を採用していることがわかります。
自社の製品を誰に、どのように届けるかは重要な要素です。現地消費者の購買習慣(購入チャネルや購入頻度)や流通市場の特性(インフラの整備状況やコスト)を総合的に考慮し、製品がターゲット層に確実かつ効率的に届くよう、最適な販売チャネルを構築することが求められます。
事例分析:VIVAIA
インターネットの普及やコロナ禍により、世界的にECサイトで商品を購入する消費者が増え、それに伴いオンライン販売を行う企業も増加しています。
ここで、弊社が日本事業の展開・運営を100%担っているグローバルレディースシューズブランドであるVIVAIAを例としてご紹介します。
VIVAIAは主にオンライン販売を中心に展開してきたため、日本進出時もオンライン販売が中心でした。
しかし、弊社は日本では依然としてオフラインでの購買が主流であることに着目し、VIVAIAのオフライン店舗を開設しました。これにより、オフライン店舗はお客様に新たな顧客体験を提供すると同時に、新規顧客の獲得にも繋がりました。
さらに、顧客理解が深めったことでオンライン店舗の利便性や満足度が向上し、オンラインとオフラインの相乗効果を実現することができました。このように、VIVAIAは日本の流通事情に合わせた現地化戦略で成功を収めました。
進出先で広告やキャンペーンを通じてブランドを浸透させるためには、その国の文化や価値観を深く理解する必要があります。メッセージやビジュアルが現地の人々に自然に受け入れられるよう、言語や表現方法にも配慮することが重要です。
事例分析:コカ・コーラ
1957年に日本に進出して以来、コカ・コーラは目覚ましい成功を収めていますが、その背景には日本特有の文化に合わせたマーケティング戦略があります
1970年代や1980年代のコカコーラの広告を見てみると、アメリカでは主に若者をターゲットに、自由や青春、恋愛といったテーマが多く扱われていました。
一方、日本の広告では若者だけでなく、家族や職場をテーマにしたものも多く見られました。
この違いは、国民文化の特徴を分析する手法である「ホフステードの6次元モデル」で説明できます。このモデルは、異なる国や地域の文化を6つの軸で比較し、それぞれの価値観や行動傾向を理解することで、異文化間の相違点を説明するのに役立ちます。
下の図の「Individualism(個人主義)」という軸からわかるように、「個人主義 vs.集団主義」での観点では、アメリカは個人主義が強く、自由や個人の成功を重視する文化が特徴です。一方、日本は集団主義が強く、家族や職場などのグループ内の調和や協力を重要視します。
コカ・コーラは日本特有の集団主義や家族の絆、職場内の調和を重視する文化に合わせたシチュエーションを広告に取り入れることで、日本人消費者の共感を生み出し、製品が自然に受け入れられやすくなりました。
商品やサービスを海外展開する際には、自国と同じ価格を設定することも可能ですが、進出先の経済状況や消費者の購買力、競合状況など
を考慮し、柔軟に価格を調整することもできます。
事例分析:ChatGPT
現在、OpenAlが開発したChatGPTという生成Aは世界中で高い注目を集めています。この業務効率を大幅に高めてくれるツールですが、その価格は世界共通となっています。
その理由は、ChatGPTのようなデジタル製品の提供コストに地域差が少ないからです。物理的な製品とは異なり、輸送費や関税などのコストはかかりません。機能が同じであれば、どこに住んでいよう価格は同じであるべきだと考える人が多いでしょう。OpenAlはこの点に着目し、ChatGPTの価格を世界中で統一するという標準化戦略を取ったと考えられます。
進出先で製品を販売する場合、その国に合わせて製品の改良や新しい製品の開発が必要になることがあります。開発には多額の費用がかかる可能性がある反面、進出先と密接になり、競合他社との差別化を図れるかもしれません。
事例分析:マクドナルド
マクドナルドは、日本に進出してから半世紀以上が経過し、大きな成功を得ています。その成功の秘訣の一つに、日本独自のメニューを提供していることが挙げられます。
ビッグマックやフライドポテトといった世界共通のメニューを提供しながら、照り焼きバーガー、月見バーガー、えびフィレオなど、日本の食文化に合わせたメニューも提供することで、幅広い層の顧客を獲得しています。
この事例から、マクドナルドは日本市場向けの限定メニューの提供という現地化戦略を採用していることがわかります。
これらの事例から、グローバルマーケティングで成功を収めるためには、自社の製品やサービスの特徴と、進出先の市場環境を十分に考慮した戦略策定が重要であることがわかります。また、本文でもお話しましたが、グローバル市場で成功するためには、進出先の文化理解が不可欠です。
今回は文化の違いを分析する上で有用な「ホフステデの6次元モデル」を簡単にご紹介しました。次回以降、このモデルの詳細と、具体的なマーケティング戦略への応用例を解説していきたいと思います。